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- 駒木 綾乃
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経皮感作(けいひかんさ)とは、荒れた肌から食べ物などが入り、体がそれを「敵」だと覚えてしまうこと。食べ物のアレルギーは、口からではなく肌から始まることがある、という考え方です。海外と日本の研究でわかってきたことを、まとめました。
この記事の内容
経皮感作とは ── 肌から入るアレルギー
食べ物のアレルギーは、その食べ物を食べたことで起きる。長いあいだ、そう考えられてきました。だから以前は、妊娠中や授乳中、離乳食の時期に、アレルギーの起きやすい食べ物を避けるように言われることもありました。
ところが、その考え方だけでは説明がつかないことが見えてきました。そこで出てきたのが、「アレルギーの始まりは、口ではなく肌かもしれない」という考え方です[2]。
体が、ある食べ物を「敵」だと覚えてしまうことを「感作(かんさ)」と呼びます。肌(皮膚)から感作が起きることを、「経皮感作(けいひかんさ)」といいます。
肌からは「敵」、口からは「慣れ」
イギリスのギデオン・ラック医師は、2008年にこんな考え方を出しました[2]。
- 荒れた肌から食べ物が入ると、体はそれを「敵」だと覚えてしまう
- 口から食べると、体はそれに「慣れる」
2つの入り口で、体の反応が違う。この考え方は「二重抗原曝露(にじゅうこうげんばくろ)仮説」と呼ばれています。湿疹のある赤ちゃんに食物アレルギーが多いことも、これで説明しやすくなります[2]。
日本でも、兵庫医科大学の研究者が、マウスを使った実験でこの考え方を確かめた研究をまとめています[3]。

きっかけになった研究
この考え方のもとになった研究の一つが、イギリスで約1万4千人の子どもを追った調査です[1]。
ピーナッツのアレルギーがあった子どもには、次のような傾向がありました。
- ひじやひざの内側など、関節や肌のしわに湿疹があった
- じくじくしたり、かさぶたになったりする湿疹があった
- ピーナッツの油が入った塗り薬やクリームを使っていた
一方で、お母さんが妊娠中にピーナッツを食べていたかどうかとは、関係が見られませんでした[1]。研究したチームは「炎症のある肌にピーナッツ油を塗ることで、感作が起きているのかもしれない」と考えました。ただしこれは、関係があったことを示した調査で、原因だと決まったわけではありません。
日本で起きたこと ── 石けんと小麦のアレルギー
日本にも、経皮感作がはっきり表に出た出来事があります。
2009年、ある石けんを使っていた人が、パンやうどんなど小麦の入った食べ物を食べたあとに、じんましんや息苦しさを起こした例が初めて報告されました。石けんには、小麦からつくられた成分(加水分解コムギ)が入っていました。報告された人は、あわせて2,000人を超えています[4]。
肌に使ったもので小麦に感作し、その後、食べたときにアレルギーが起きた。肌から入るアレルギーがあることを、多くの人が知るきっかけになりました。

湿疹の治療と、卵のアレルギー
では、赤ちゃんの湿疹を早くしっかり治療すると、食物アレルギーは減るのでしょうか。国立成育医療研究センターなどが、これを確かめる試験(PACI研究)を行いました[5][6]。
生後7〜13週で湿疹(アトピー性皮膚炎)のある赤ちゃん640人を2つに分け、塗り薬(ステロイド)による治療のしかたを比べています。
- 湿疹のない肌も含めて、早めにしっかり治療した組:生後28週で卵のアレルギーがあったのは31.4%
- 湿疹が出たところを、出たときに治療した組:41.9%
早めにしっかり治療した組のほうが、卵のアレルギーが少なくなりました[5]。
ただし、この組の赤ちゃんは、体重や身長の伸びが少し小さくなっていました。研究したチームも、このやり方をそのまま毎日の診療に使う前に、見直しが必要だと書いています[5]。これは、医師が薬で行う治療の研究です。
ここまでのまとめ
- 湿疹のある赤ちゃんは、食物アレルギーになりやすい傾向がある
- 肌に使ったものに入っていた食べ物の成分で、アレルギーが起きた例が、日本で実際にある
- 動物の実験では、肌から入ると感作が起き、口から入ると慣れにつながることが示されている
- だからこそ、赤ちゃんの肌をすこやかに保つことと、肌に使うものの成分を知っておくことが、だいじになります
肌のバリアには、肌にすむ菌も関わっていると考えられています。くわしくは「赤ちゃんの肌の常在菌は、生まれてから1年かけて育つ」へ。
赤ちゃんの肌荒れが続くとき、湿疹がじくじくしているときは、自己判断で様子を見続けず、小児科や皮膚科に相談してください。
よくある質問
赤ちゃんに湿疹があると、必ず食物アレルギーになる?
必ずではありません。研究でわかっているのは、湿疹のある赤ちゃんは食物アレルギーになりやすい傾向がある、ということです。気になるときは、自己判断せず、小児科や皮膚科で相談してください。
この記事は一般的な情報です。肌の症状が続くとき、気になるときは、医師にご相談ください。
参考にした資料
- Lack G ほか(2003)Factors associated with the development of peanut allergy in childhood(New England Journal of Medicine)
- Lack G(2008)Epidemiologic risks for food allergy(Journal of Allergy and Clinical Immunology)
- 善本知広(兵庫医科大学)(2017)経皮感作食物アレルギーの分子メカニズム:二重抗原曝露仮説の実験的エビデンス(アレルギー 66巻10号)
- 日本医療研究開発機構(AMED)(2019)小麦に対するアレルギーへのなりやすさ・なりにくさに関わる遺伝子を特定
- Yamamoto-Hanada K ほか(国立成育医療研究センターほか)(2023)Enhanced early skin treatment for atopic dermatitis in infants reduces food allergy(Journal of Allergy and Clinical Immunology)
- 国立成育医療研究センター(2023)プレスリリース(2023年4月10日)PACI研究の結果
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